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【白河塾 課題文タイプ 例題3

課題文型 「技術と思想」

 

<問題> 以下の文章で、筆者は「ひとたび技術文明を認めれば、自動的にそれは原発まで行き着いてしまうのではないか」と主張していますが、以下の文章を読み、その主張に対するあなたの意見を述べなさい(字数自由)。

 

技術文明との付き合い方

 

 ヨーロッパではドイツやスイスやイタリアが脱原発を宣言しました。しかし彼らはフランスから電力を買えるし、またこの先どのように展開するかわかりません。アメリカにも環境主義や自然主義はありますが、日本の原発事故程度ではアメリカの原発推進は止まらないでしょう。遺伝子技術もITも金融工学も絶対にやめません。

 問題がでれば、よりよい技術を作り出すだけなのです。それが、人間の自由の拡大と幸福の実現に結びついているという信念があるのです。神が自然を人間の役に立つように創ったのなら、人は自らの幸福のために自然を支配することができるはずなのです。自然という制約から自立することが人間の自由だというわけです。

 ここにアメリカと日本の大きな違いがあります。われわれはどうみてもそんな信念をもっていません。科学や技術を信仰するような宗教的背景をもっていないのです。科学や技術への期待を「主義」にまで持ち上げるには、何か強烈な精神的背景が必要なのです。それが日本にはありません。

 だから、われわれは科学や技術を使いながらも、そのことに確信がなく、問題が起きればすぐにオタオタする。責任のなすりつけあいになる。最後は、結局、「よそがやっているから」という情勢追随主義になるのでしょう。

 ITや遺伝子工学も同じで、それがわれわれの「幸福」にとってどういう意味があるのか、などという問いもなければ、特別な思い入れも、また特別な反対もなく、ただ「アメリカがやっているから」とか「世界の潮流から遅れるから」というだけのことなのです。

 今回の原発も同様でしょう。推進派もどうもそれほど強い信念があるわけでもない。反対派も情緒やイデオロギー的執念以⊥の強い信念があるようにはみえません。推進するにせよ、反対するにせよ、それを支えるほどの「信仰」も「哲学」もないのです。

 じっさい、原発に「原則的に」あるいは「論理的に」反対するのは決して容易なことではありません。情緒的には多くの人が何となくそう思う。しかし、どうして火力発電はよくて原発はダメなのか、水力はよくて原発はどうしてダメなのか、その決定的な理由を説明するのは難しいのです。

 被害の大きさでいえぼ、今まで原発事故で死んだ人は数名程度です。それならば世界中で交通事故で死ぬ人ははるかに多い。飛行機事故の死者もはるかに多い。ではどうして、自動車や飛行機には反対しないのか。電力にしても、火力発電のための石炭採掘できわめて多数の人が事故死し、水力発電のための黒部ダム工事でも相当の人が死んでいます。

 つまり、技術文明そのものにわれわれはどうして反対できるのか、ということです。あるいは、ひとたび技術文明を認めれば、自動的にそれは原発まで行き着いてしまうのではないか、ということです。どこかに線を引くことのできる決定的な理由は果たしてあるのでしょうか。

(佐伯啓思 『反・幸福論(新潮新書)』より)


 

 

※ヒント 単に筆者は、「原発賛成」「原発反対」と言っているわけではないことに注意して下さい。原発の是非を通して、アメリカにはあって、日本にはない(と筆者が考えている)ものが課題文に提示されているので、それについての考察をしなければなりません。

 

 

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