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ネットで小論文講座 基礎編 第9講(最終講)

【具体例は主張と一致させること】

 

§1 まだある、具体例を書くときの注意点

 大変お疲れさまでした。この講で「基礎編」はひとまず終了となります。最後の講として、具体例に関する注意点をさらに追加しておきたいと思います。

 それは、「具体例を主張と一致させることの重要性」です。これも非常によくあることなのですが、前回と前々回にしつこく言ったように、具体例を具体的に考えすぎたせいで、その具体例が主張とずれてしまうというミスに注意してほしいのです。

 論より証拠、ここでも具体例をごらんいただきましょう。例によって、「読者からのツッコミ」を予想してみて下さい。

 

<問題例>
「若者の社会参加を促すために、民法上の成人年齢を、現在の20歳から18歳に引き下げるべきだという意見がある。これについて、あなたの意見を述べよ。」

<解答例>
 私は反対である。なぜなら18歳に引き下げたことで、社会参加が促進されるとは限らないからである。
 例えば18歳以上の人が選挙権を持ったとしても、投票率の低下があっては社会参加が促進されると言うよりむしろ現在の社会問題をより悪化させることになる。
 投票したい人だけに権利を与えればいいと言う人がいるかも知れないが、18歳以上20歳未満の人だけ選挙権を選択制にするのはおかしいと思う。日本の政治のもとで生活しているのだから、政治を行う人を選ぶ義務がある。18歳以上に引き下げられるのならば、18歳以上の全ての人に選挙権が与えられるべきであるし、20歳以上の人は選択制ではないのに、18歳以上20歳未満の人だけを選択制にすることは不平等だと思う。
 年齢を18歳以上に引き下げたことで社会参加が促進されるわけではない。
(約330字)

 

 まず、第3段落については、「成人年齢が18歳に引き下げられることと、選挙権が選択制になることは全く関係ない」と反論することができますよね。したがって第3段落は「無意味な段落」となり、全く採点されません。厳しく言えば、「この部分は0点」となります。

 ここで重要なのは、第2段落です。この生徒さんは第2段落で

>例えば18歳以上の人が選挙権を持ったとしても、投票率の低下があっては社会参加が促進されると言うよりむしろ現在の社会問題をより悪化させることになる。

と述べています。そこで考えて下さい。「社会問題を悪化させること」は、「社会参加が促進されること」の「否定」になるのだろうかと?

 もし否定にならないのであれば、第1段落に書いてある

>私は反対である。なぜなら18歳に引き下げたことで、社会参加が促進されるとは限らないからである。

という「結論」を「支持」する「例」にはなっていないということです。

 

 一番ていねいに考えるならば、この生徒さんは、「社会参加」も「社会問題の悪化」も、どちらも定義していないので、「何とも判断できない」という結論になり、厳しいですが、第1段落、第2段落ともに0点となります。

 残ったのは第4段落ですが、これも、結論しか書いていないのと同じなので、これも0点です。

 したがって、一番ていねいに考えるならば、この「小論文」は、全て0点という採点結果になります。小論文の怖さがおわかりいただけると思います。

 

 ただ、これではこの講の狙いが伝わらないので、次に、もう少しおまけして判定してみます。仮に「社会参加」を、「選挙で投票すること」と定義します。「社会」とは「人の集まり」というイメージをもつ生徒さんが多いですが、一般的には、お互いにさまざまな役割を果たすという意味で「関係がある人どうしの集まり」と定義されることが多いです。問題において、

>若者の社会参加を促すために、民法上の成人年齢を、現在の20歳から18歳に引き下げるべきだ

とあるわけですから、現状において、20歳以上なら参加ができており、18歳では参加ができていない「社会」とは何か、と考えれば良いわけです。一番わかりやすいのは「選挙権」ですよね。現状において、20歳以上なら誰でも選挙権を持つわけですから。ですから、この「社会参加」を「民法上、18歳で成人になることで、18歳から選挙権を持ち、選挙で投票すること」と具体化することができます。選挙権を持っているだけで、投票しなければ、社会に「参加する」とは言えなさそうですから、「選挙権を持つこと」だけでは足りないと考えることも重要です(ここでも「具体化」ですね)。したがって、「社会参加」を、この場合、「選挙で投票すること」と定義することは妥当だと、大学の先生も考えるでしょう。

 次に、「社会問題が悪化すること」の定義ですが、これはさまざまな例が思いつくので、定義が難しいかも知れません。でも、「具体化」が重要と私は言い続けてますから、さまざまな例とやらをどんどん出していきましょう。

・犯罪を犯す人が増えること。
・(そのことにより)夜に一人で歩きづらくなること。
・(上と同様に)電車に乗るときも、スリやひったくりに注意して乗らなければならなくなること。
・(上と同様に)犯罪取り締まりや裁判が増えるせいで、警察官や裁判所、裁判官、刑務所、刑務官などが必要となる。
・(上と同様に)雇用は一時的には増えそうだが、採用でも学歴で嘘をついたり、警察官や裁判官自身が犯罪を犯したりすることで、社会全体に対する信用が落ちるので、経済的にも良いことはない。

・・・などなど

 具体化してきましたが、要するに、1点目の、「犯罪を犯す人が増えること」が根っことして重要だと判断してよさそうです。したがって、「社会問題が悪化すること」を、「犯罪が増えること」と定義します。

 これらの作業の上で、もう一度判断してみます。この生徒さんは、

1 成人年齢が18歳に下がることによって、

2 犯罪が増え、

3 その結果、選挙で投票する人が減る。

と主張しているということになりますが、この「論理」は、論理として成立しているでしょうか?

 

 ・・・残念ながら、「それでも論理としては成立していない」という判定になるでしょう。なぜなら、成人年齢が18歳に下がることによって、どのように、なぜ、犯罪が増えるのかがわからないからです。民法上の成人年齢が18歳に下がることで、飲酒や喫煙ができる年齢も18歳に下がるかどうかはわかりませんが、仮に一緒に下がるとしても、「今までとは違い、18歳や19歳の新成人が飲酒や喫煙を大いに行うせいで、犯罪が増える」という指摘は、この文章ではなされていません。したがって、上の1から2への矢印がつながらないのです。

 一方で、2から3への矢印は、少し成り立つかも知れません。なぜなら、犯罪が増えれば、休日に投票所へ行くことも面倒なことになるかも知れないからです。犯罪が増えることで、例えば小さな子どもがいる家庭では、投票所で自分の子どもが誘拐される危険性がそこそこあると判断し、投票に行かなくなるかも知れません。子供がいない家庭でも、自分のサイフが投票所ですられたり、ひったくられたりするかも知れないなどと思うかも知れません。

 しかし、犯罪が増えることで、投票へ行く人がむしろ増える可能性もあります。なぜなら、犯罪が増えるということは、政府や地方自治体の犯罪対策が不十分だからで、犯罪対策をしっかり訴えている候補者を当選させることで、自分たちの町の治安を回復してもらおうとする有権者が増えるかも知れないと考えられるからです。

 両方の可能性を考えると、2から3への矢印も、説明がないままなので、「判断不能」と判定されてしまうでしょう。

 したがって、少し甘く採点しようとしても、このレベルの答案では、「例が主張とつながっていない」と判断され、限りなく0点に近い点数しか与えることができません。

 

 

§2 ではどうすれば良かったのか

 この講が基礎編の最終講ですから、ではどうすれば良かったのかについてもコメントしておきましょう。

 ここまでの文章でおわかり頂けたと思いますが、とにかく、第2講で繰り返したように、「言葉の意味を自分で定義する」ことが大前提となります。問題にある「社会参加」とは何か、そして、成人とされる年齢が18歳に下がることで、その「社会参加」が増えるのかそうではないのかということを「具体化」して考えることで、賛成にせよ、反対にせよ、「論理としてつながりのある」文章は書けたはずです。

 また、この生徒さんは、「例えば」という言葉で始めれば、その後は自動的に「例」になる、と思い込むクセがあるようです。この講ではそこが重要で、いくら「例えば」という言葉で段落を始めたとしても、内容として、第1段落の「主張」につながっていかない限りは、全く評価されないわけです。だから、

・成人年齢が18歳以上になっても社会参加が増えないとすれば、その例は何か??

と、「主張に合致した例」を頭の中で必死に連想しながら作っていく、こういう作業が必要だったと思います。

 

 最終講で、こういう厳しい採点例を具体的に見せたことで、むしろ危機感を感じた生徒さんが多いのかも知れません。しかし、だからこそ、「小論文は早めの準備を!!」と訴えたいのです。小論文という科目は、日本人でありさえすれば、少しのトレーニングですぐに書けるようなものではありません。しかし、適切にトレーニングしていけば、他の科目より、はるかに少ない負担で得意にすることができます。この「ネットで小論文講座 基礎編」をたまたまでも読んでしまった生徒さんが、一人でも多く、小論文を早めに準備するために、一刻も早いスタートを切ってほしいと切に願います。

 

 

<第9講 まとめ>

9-1 小論文をうまく書こうとすると、さまざまなことを同時に判断して書かなければならないような気がしてくるが、改めて第0講から読み直して、やるべき作業を一つずつ順を追ってやるようにすれば、「頭の整理のしかた」は見えてくるはず。

9-2 「具体例」は、その例が支持しようとする「主張」と、論理的につながっていなければならない。例が主張とつながっていなければ、評価はきわめて低くならざるを得ない。ということは、例と主張が論理的につながるように、さまざまな言葉を定義したり、さまざまな具体例を連想するクセをつければ良い。

9-3 困ったら「とにかく具体化」である。どんな問題でも頭の中で「具体化」ができるようになれば、もう「上級者」の入り口まで来ている。

 

 

 

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